塗装と調色の用語
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テレビやラジオの電波、乾燥に使う赤外線、目に見える光などは、すべて電磁波という言葉で総称される。そのうち目に見える部分が可視光線である。太陽はあらゆる波長の電磁波を発しているが、その量のピークは可視光線の辺りにある。これは偶然でも何でもない。太陽から出る電磁波の中で最も多い部分を感じるように、生物が進化してきたからだ。なお、波長で表わせば可視光線は約380〜780ナノメーターの間になる(1ナノメーターは百万分の1ミリ)。虹の七色でいえば、赤、橙、黄、黄緑、緑、青、紫の順に波長が短くなる。それ以上に波長が短くなると紫外線になって目に見えなくなる。また、赤より波長が長くなると、赤外線になってやはり目に見えなくなる。
カーメーカーが採用していないような特殊な塗装を施すこと。1)一般的な補修用塗料を利用して特殊な塗装にする、2)塗料そのものに特殊なタイプを使う、3)ボデーに絵や図柄を描くなどの方法がある。1)では、例えばボデーの上から下まで色が徐々に濃くなっていくようなグラデーションペイント、ラインやストライブを入れる、木目模様にするなどが考えられる。2)はキラキラ感の強いフレーク状のアルミ顔料の入った塗料、何度も塗り重ねて深い色合いを出すキャンディ塗料、くもの巣状の模様になる塗料など、変わった塗料がいくつかある。多くは米国製である。パールも元々はカスタムペイントの人気者だったが、今では普通の塗装になってしまった。3)はブロックや炎などの単純な図柄から、バンの側面いっぱいに派手な絵を描いたものまで、お好み次第である。単純なパターンなら普通のスプレーガンで塗装できなくもないが、複雑な絵になるとやはりエアブラシの出番となる。ボデーの改造にはうるさい日本の法規も、塗装となると特別な規定はあまりないから、わが国のカスタムカーは塗装に凝るのが主流になっている。ただしアニメやブランドマークなど、著作権の絡む図柄は、個人で楽しむならともかく、商品にすると問題になる可能性がある。ご注意を。
新車のボデーカラーには、色ごとにアルファベットや数字を組み合わせた<カラーコード>が設定されている。ハイパーホワイトとかイリュージョンレッドなどの色名は、車種によって同じ色でも違っていたりするが、カラーコードは原則としてひとつの色にひとつ、つまりカラーコードを指定すればボデーカラーを特定できるわけだ。全カーメーカーが共通した基準でカラーコードを付けていればいいのだが、残念ながらカーメーカーごとの設定で、同じカラーコードでもメーカーが違えば色も違う。また、カラーコードは、車種型式やエンジン型式などを記入したモデルナンバープレートに表示されている場合が多いが、別の場所に表示しているメーカーもある。同じメーカーでも車種が違えば、カラーコード表示位置も違っている場合もある。  計量調色では、カーメーカーごとのカラーコードに応じて原色配合率が設定されている。カラーコードごとに、採用車種名、見本塗り板、その色に対応する原色配合表をセットしたものがカラーカードで、1枚当たり10色程度が掲載され、それがカーメーカーごとにまとめられて1冊の本になっている。<カラーチャート>とも呼ばれる。  カラーカードの塗り板見本は、そのカラーコードの新車塗装に合わせた色を、特殊な技術で紙の上に吹き付け塗装し、それを裁断して貼り付けたものである。印刷ではないから、ほぼ忠実に新車の色を表現している。この塗り板が<カラーチップ>である。  カラーカードは毎年増加する新色に合わせ、毎年発行されている。従来は塗料メーカーごとに作成されていたが、1987年から日本塗料工業界が、カラーコード塗り板見本など、共通する部分をまとめて製作し、その裏面に原色配合表だけを、各塗料メーカーがそれぞれ印刷して配布するようになった。毎年2月頃に前年の新色を中心にまとめたものが発行されている。それ以外に、新車が出てすぐに作成される車種ごとのカラーカードや5年分程度をひとまとめにした大型本的なカラーコードは、とりょうめーかーがそれぞれ独自に発行している。  より調色の精度を向上させると共に、高度な技術が必要な微調色をなるべく少なくするため、ひとつのカラーコードに対して2〜3種類の塗り板を設定した(もちろんそれぞれの原色配合も含む)カラーカードもある。生産時期やラインの違いによる新車塗色の色フレ、経年による色変化も配慮されており、ますます便利になってきた。
単位面積当たりの反射光線の明るさが輝度である。つまり白っぽい色ほど輝度が高くなる。メタリックなどでわかるように、見る角度によって輝度は変化する。
キャンディカラー
カスタムペイントに使われる特殊な塗料で、クリヤーに発色剤(トナー)が入っていると思えばいい。薄く何層にも塗り重ねると、透明感が強く、ちょうどキャンディ(あめ玉)のような色合いの塗装になる。基本はラッカー系塗料で、薄く薄く重ねても、10回以上塗ることもあり、厚膜になるので耐候性は良くない。ウレタン系クリヤーで同じものもあるが、一度の膜厚が大きくなるので、効果はやや落ちるようだ。  クリヤーに顔料を混ぜて塗装したものをキャンディカラーと呼ぶ場合もある。ホンダ車では、2輪車以来ときどきそんな色があった。トヨタと日産でもクリヤーに顔料を混合した塗装が採用されている。この種の塗色はキャンディカラーとはあまり言わず、単にカラークリヤー塗装などと呼ばれている。スープラの3L2スーパーレッド、スカイラインのAN0スーパークリアレッドがそれである。
旧塗膜
補修塗装する場所の周辺またはその部分の塗膜。新車塗装ならいいが、1度補修してある塗膜だと扱いが面倒である。旧塗膜の扱い方は、新車塗膜はなるべくはがさず、補修塗膜はできるだけはがす、が基本になる。では新車塗膜と補修塗膜をどのようにして見分けるのか。まずシンナーで拭いてみる。これで色落ちするのはラッカー系の補修塗膜だけだが、硬化不充分の2液型塗料など、不完全な塗膜を見つけることができる。シンナーで色落ちするようなら、迷わずその部分をはがしてしまう。簡単な膜厚計を利用してもいいだろう。たとえば上塗り塗膜だけの膜厚を精密に測定できるような膜厚計は、かなり大げさな道具になるが、パテが入っているかどうか見分けるだけなら簡単なものでいい。また、補修する部分をはがす前に、#600ぐらいのペーパーで研磨し、80℃ほどの熱を加えてみるという手もある。ラッカー系塗膜なら、ペーパーがけで消えた光沢が、熱で再び戻ってくる。  補修する部分の周辺に錆が出ていたり、ブリスターやワレ、フクレなどのトラブル状態なら、たとえ新車塗膜でもはがしてしまわなければいけない。肌や光沢の具合で判断できるようなベテランなら、何もつけ加えるようなことはないだろう。
鏡面肌
従来、新車の焼き付け塗装の肌は、軽い規則的なデコボコがあるゆず肌になっていたが、1980年代後半頃から、新車と装の肌はつるんとした鏡面肌に変わってきた。より光沢を高め、外観を向上させるためである。これに合わせて補修塗装でも、表面を<鏡面仕上げ>することが求められる。もともとウレタン系塗料は鏡面肌になりやすく、焼き付けのゆず肌に合わせる方が難しかったが、新車の鏡面肌は、鏡面度が高く、速乾ウレタン塗料では、ポリッシュに工夫が必要になった。また、濃色系のボデーカラーが増え、磨き跡の問題や作業時間の点などから、磨き作業に頭を悩ます工場も増えている。吹き付け作業が雑だと、いくら磨いても鏡面肌にならない。肌作りは吹き付けの段階から考える必要があるだろう。
クリヤーカット
調合した原色にクリヤーを加えることをいう。主にソリッドカラーの調色に利用されるテクニックで、透明感の強い艶を出すときに使うテクニックである。
計量調色
塗料メーカーなどが作成した配合率に従って、原色を計量しながら調色するのが計量調色である。自動車のボデーカラーでは、メーカーごと、カラーごとにほぼカラーコード(ナンバー)が設定されている。新車発表時には、塗料メーカーは塗り板を元に、自社の上塗り塗料のどの原色をどんな比率で配合すれば同じ色になるかを分析し、原色配合データを作る。配合比率は重量比で示されるものと容量比で記されているものの2通りあったが、今では重量比が中心である。  計量調色に使うのが<計量調色器>で、簡単なものは単なるハカリと配合データの組み合わせになる。<計量カップ>には、PP製の使い捨てカップがよく用いられる。計量調色に使うのでそう呼ばれるが、カップで計量することはあまりない。計量するハカリの方は、電子技術の発達でずいぶん使いやすく精密なものが市販されている。重さが直接数字で表示される<デジタル計量器>が中心で、カップの容量を自動的に差し引きしたり、作る量にあわせて配合データの数字を読み換えるなど、計算機能も持っている。さらに配合データを記憶していて、ボタン操作で自由に呼び出せる便利なものもある。  新車の塗り板で配合データを作っても、その後の生産時期や経年変化などで色が違ってくる場合もある。そこで実際に走っている車の部品を集め、それに基づいて調色したデータをまとめているのが<実車調色システム>である。実車にできるだけ近い色とするため、同じカラーコードの色に2〜3通りの見本塗り板と原色配合が設定されているものも多い。  コンピューターでより正確な調色を実現しようとしているのが<測色調色システム>である。ボデーカラーの判定には光を当ててその反射光で色の特性を判別する<測色機>が用いられる。こうして判別された色の特性に最も近いボデーカラーが、本体のコンピューターや電話回線などでつながれたコンピューターの中から選ばれ、その原色配合が表示される。そのデータによって調色し、今度は作った色の試し塗り板を測色機で計測すると、元の色との違いが表示され、それに応じて微調整して色を近ずけていく。このシステムを使えば、経験や知識があまりなくても調色できるが、まだパーフェクトというわけにはいかず、色によってはうまく合わない色もあるようだ。ただしこのシステムを繰り返し利用することで、短期間に調色技術をマスターできるというメリットがある。
原色
ボデーショップでは40〜50種類ある上塗り塗料の色を調合し、車のボデーカラーにピッタリ合った色を作る。調合するオリジナルの色や塗料そのものを原色と呼ぶ。原色は1種類または複数の着色顔料が溶剤によって溶かされた樹脂の中に分散されている。メタリックベースやパールベースも広い意味の原色に含まれる。ただしそれらは着色顔料ではなく、メタリックベースでは様々な種類のアルミ片をクリヤー塗料に混ぜてある。パールベースは塗料の形をしたもの以外に、パウダー状のタイプも用意されている。  原色には一般用原色と調色用原色がある。一般用原色は単独で使っても問題のでない原色で、調色用原色は単独で使うと耐候性に弱く、色が薄くなったりする原色である。これらの区別や原色そのものの色、ホワイトで薄めたときの色、メタリックベースを加えたときの色などは、塗料メーカーが発行する<原色特性表>に記されている。また計量調色に使うボデーカラーごとの<原色配合率>、つまりどの原色をどのくらいずつ混ぜれば色が合うかについては<原色配合表>またはオートカラーカードに記されている。
コーティング
大雑把に言えば塗装のことだが、わが国では塗装そのものを指していうことは少なく、むしろ塗装以外で、塗装のようにボデーの表面に1層加えるようなものをいう。ワックスの効果が長持ちする表面コーティングやガラスに色を塗るガラスコーティング、その他諸々のコーティング剤が市販されている。
コート
単独で用いられることはあまりない言葉だが、関連する言葉をまとめて説明した方がよいので項目としている。 <ウェットコート>と<ドライコート> 作業上の用語は、同じ言葉でも地域や人によってずいぶん違う意味あいで使われていることがある。この言葉も抽象的な表現なので、いろいろな意味で使われるが、大きく分けると次の2通りである。まずシンナーを多く含んだ塗料を吹き付けること。たとえば仕上げ吹きやぼかし吹きでそれまで吹き付けていた塗料にシンナーを追加して吹く場合である。次に吹き付けられた塗膜の中に溶剤が多く残っている状態。どちらも同じような感じだが、たとえばシンナーの量が同じでも、乾燥の遅いシンナーを使うと、塗膜は「ウエット」になる。逆に塗料中のシンナーを少なくしたり、塗膜中の溶剤が少ない場合はドライコートである。どちらも極端になればまともな塗膜にはならず、ウエットではタレが生じ、ドライでは肌が悪くなる。塗装マニュアルでは、ドライ気味にとかウエット気味にとか指示しているが、これらはほんのひとさじ加減と心得ておこう。なお、溶剤の多い少ないに関係なく、未乾燥で濡れた感じの状態の塗膜を<ウエットフィルム>、乾燥硬化した塗膜を<ドライフィルム>と呼ぶこともある。 <シングルコート>と<ダブルコート> 一定の面積を塗装する場合、スプレーガンを端から端まで1回だけ動かして終わるのがシングルコートで、もう一度同じ場所に続けて吹き付けするのがダブルコートである。これは塗装マニュアルなどで指定されている2回塗りとか3回塗りの回数とは異なり、ダブルコートでも塗り回数は1回である。吐出量やシンナー希釈量の設定などにもよるが、特に指定なしで2回塗りとか3回塗りとかの指示がある場合、ダブルコートでの回数を示している場合が多い。
高級塗装
補修の場合も1種の宣伝文句として使われているが、よく話題になるのは新車塗膜の方である。新車塗装のバリエーションが増えだしたのは1980年代後半頃からで、パール塗装に始まり、新タイプの顔料が続々と追加された。加えて塗料そのものも改良され、肌の仕上がりはゆず肌から鏡面肌に変わり、見かけの光沢は増している。また、クリヤーも厚膜化、多層化された他、フッソや耐スリ傷性など機能性塗料の採用が増え、こうした傾向が新車塗装の高級化と呼ばれるようになった。この種の塗装は<高品位塗装>とも呼ばれる。新車塗装の動向は当然補修にも影響を与え、フッソや耐スリ傷性塗装に対応する補修用塗料や光沢や耐候性に優れているとされるアクリルポリエステル系塗料などが市販され、過去にないほど上塗り塗料の種類が増えている。
光沢
滑らかな表面に当たった光は、ほとんどが同じ角度で反射し、ザラザラの表面に当たった光は、バラバラに乱反射する。反射した光が目に入る量は、当然滑らかな表面の方が多くなる。そうすると我々の目は滑らかな表面に光沢があると感じる。<艶>も同じような感じである。JISでは<光沢度>として表現し、光源からの光が表面に当たった角度(60度または80度)と同じ角度で反射した光の量を鏡面光沢度、同じ角度で反射した光の量と、角度をずらしたり広げたときの光の量との比率を対比光沢度としている。また表面に映る像の鮮明さで比較する方法もある。これらの光沢は、それぞれの方法に対応した<光沢計>で計測される。光沢計には角度の変えられる光源と光の量を電気に置き換える光電管が内蔵されている。なお光沢のことは<グロス>とも呼ばれ、光沢計は<グロスメーター>と呼ばれることが多い。
ゴミ・ブツ
塗料中のゴミやホコリ、吹き付け作業中や乾燥中のゴミやホコリが残った欠陥塗膜のことをいう。ごく小さなホコリならコンパウンド磨きで、あるいは塗膜の上に出ている部分だけ削り取って、跡はポリッシュで修正できるが、完璧な塗装ブースやゴミのない環境はあり得ないから、ゴミやホコリはいつまでたっても補修塗装につきまとってくる。
混色
色を混ぜることが混色である。透過光による混色が<加法混色>で、色を混ぜれば混ぜるほど明るくなる。透過光を混ぜるとは、例えば色付きフィルムを重ねたり、カラーテレビなどがそれに当たる。これに対して<減法混色>は反射光による混色で、絵の具や塗料を混ぜるときがこれになる。色を混ぜれば混ぜるほど暗くなる。調色の時にはなるべく少ない色数で合わせないと、色調が暗くなってしまう。なお光の3原色(赤・緑・青)はすべて混ぜ合わせると白になり、これは加法混色、色の3原色(赤・黄・青)はすべて混ぜ合わせると黒になり、減法混色である。