塗装と調色の用語
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溶剤の蒸発速度が速すぎて、吹き付けた塗料が塗装面に届く前に乾燥硬化が進み、ホコリのようなつぶ状になって塗装面に付着するトラブル。気温の高いときにシンナーの選択を間違えたり、シンナーの比率が多すぎるときに起きる。ウレタン系の塗料では起きにくいが、ラッカー系塗料全盛時代には時折見られた。気温とシンナーの関係に注意することが大切である。起きてしまえばすぐにタッククロスで拭き取って吹き付けをやり直す。もちろん塗料の希釈率やシンナーの選び方に再考が必要だ。
広い意味では補修塗装全般のこと。狭い意味では、ボカシを含めてパネル1枚の範囲内で収まるような狭い範囲の補修塗装のこと。狭い意味の方は<スポット塗装>とも呼ばれる。塗装範囲は損傷範囲の3倍程度になるため、スポット塗装の元々の傷はごく小さなものばかりである。
調色した塗料が実際の車のボデーカラーに合っているかどうか、違っているのならどう違っているかを確かめるために、まず小さなパネルに塗料を吹き付けることが試し塗り、または<試し吹き>である。そのための小さなパネルは<試し塗り板>または<見本塗り板>と呼ばれる。これらの小パネルは、なんでもかまわないが、ボデーに当ててあちこちから色を比べてみるため、扱いやすい大きさでないといけない。また表面の色も濃すぎると上に塗る色に影響する。白か普段使っているプラサフの色に近いものが便利だ。  試し塗りでは、後からパネルに塗るときと同じ条件で塗装しないと意味はない。つまりシンナーの希釈率、エア圧、吐出量などを同じにし、硬化剤を加え、メタリックやパールではクリヤーも塗装して、乾燥させてから色を比べる。見本板を強制乾燥するには<見本塗り板乾燥機>が用いられるが、吹き付けで使うのは見本板ブースではなく、<調色用ブース>になる。
塗料はできるだけ厚く塗り込んだ方がよい艶が出るが、塗りすぎると重みでタラタラとたれてくる。たれの起きる寸前まで塗料を塗り込むのがベテランの腕の見せ所とされているが、それでも時にはたれるときもあるようだ。塗料の重みが関係してくるから、ボンネットやルーフのような水平になっているパネルと、ドアやフェンダーのような垂直になっているパネルでは、たれないで塗り込める塗料の量も違ってくる。<流れ>と呼ぶ人もいる。
ちぢみ
塗った塗料の溶剤が下の塗膜を冒し、表面が細かいシワシワ状になってしまうトラブル。下の塗膜の硬化乾燥が不充分なときに起きる。<リフティング>とも呼ぶ。ラッカー系塗料とウレタン系塗料が同じように使われていた時代、このトラブルは塗装担当者の恐怖の的だった。ラッカー系塗料で補修した上に、ウレタン系塗料を重ねると、ちぢみが生じる場合が多かったからだ。また、初期のウレタン系塗料では、1度塗って何かの不都合が起き、もう一度その上から塗り直すと、ちぢんでしまうこともあった。硬化の状態が完全かどうかは、外から眺めるだけでは分かりにくいため、ベテランクラスにとっても起きるか起きないかの判断が難しい。危なそうなときには2液のウレタンプラサフでカバーしてしまえばほぼ安心である。補修のやり直し場合は、最初の塗膜に熱を加え、しっかり乾燥させてから塗り直すことが大切である。  パテは薄い部分ほど乾燥が遅く、不注意な作業では、周囲のフェザーエッジの部分が完全に硬化しない間に次の工程へ進んでしまう。硬化不充分なパテ、ラッカープラサフ、ウレタン系塗料と重ねると、パテの周囲の部分にチヂミが生じ、パテを塗った範囲がくっきり浮き出てしまう。これが<パテ跡>または<パテ跡のちぢみ>である。
チョーキング
塗膜が劣化して艶を失い、表面が粉を吹いたような状態になるトラブル。現在の塗料では、きちんと塗装していればほとんど生じることはないが硬化剤の配合を間違っていたり、耐候性の悪い顔料を含む原色を多く使って調色すると危ない。塗装後すぐにわかるようなトラブルではなく、かなり時間がたってから起きるため、塗膜だけでなく人間同士のトラブルにもなりやすい。
調色
色の数は無限にあるが、塗料の色数はそうもいかない。数種類の塗料を混ぜ合わせて、必要とする色を作り出す作業が調色になる。自動車のボデーカラーは数百種類あるが、ボデーショップでは、約50種類程度の原色を混ぜ合わせることで、必要な色を作り出す。昔は作業者の勘と経験だけで行なわれていたが、今では新車の発売や新色の発表ごとに、塗料メーカーは自社の塗料による原色の配合データを用意し、それに基づいた計量調色が行なわれるようになった。<色合わせ>とも呼ばれ、カタカナでは<カラーマッチング>とか<チンチング>などと表現される。
ツートーンカラー
2色で塗り分けたボデーカラーがツートーンカラーである。同色系、メタリックとパールなど、組み合わせはいろいろで、上級車種にオプションとして取り入れられていることが多い。塗装の塗り分けではなく、バンパー、サイドガーニッシュの色を変えてツートーンカラー風にした車種もある。もう1色増えて3色になったり、2色でも上部、中央、下部の3段階に塗り分ければ<スリー(3)トーンカラー>となる。さすがに一般の乗用車では例は少ないが、ワンボックスのワゴンやマイクロバスでは珍しくない。  この種の塗装では補修料金が問題になりがち。単純に2倍するわけにもいかないし、補修部位やどんな料金体系(指数)を利用するかでも変わってくる。
電着塗装
塗料を入れたタンクなどに、塗装するものを浸け、塗料と塗装するものの間に電気を流して塗料を付着させる塗装方法。ED塗装とも呼ばれ、自動車では新車ラインの下塗り塗装に用いられている。塗料の無駄が出ず、塗装物(ホワイトボデー)の隅々にまで均一な塗膜を作ることができる。  ボデー側をプラスにして電流を流すのが<アニオン電着塗装>で、ボデー側をマイナスにして電気を流すのが<カチオン電着塗装>になる。アニオン式では、ボデー側の金属成分が塗料注に少し溶け出すため、塗膜性能はカチオン式の方がよくなる。もちろん新車ラインではカチオン電着が主として用いられている。  塗装するもの全体を塗料に浸す塗装は<ディッピング>と呼ばれる。ED塗装のEDは、Electro Dippingの略でもある。
塗装条件
スプレーガンによる吹き付け塗装には、非常に微妙な要素がある。吹き付け作業のテンポや距離、シンナーの薄める量などによって色の見方や肌の状態が変わってくることも少なくない。このような仕上がりに影響する要素が塗装条件である。様々内容があるが、塗料側ではシンナーの希釈量、粘度、塗料の種類(ウレタンかラッカーかなど)、スプレーガンではエア圧、吐出量、パターン、吹き付け作業ではガンを動かす速度、塗装面との距離、その他の面からは気温、風速、湿度などが関係してくる。
塗着効率
吹き付けた塗料が、どの程度塗装する面に付着するかを比率で表わした数字。これが悪いと塗料の無駄が多くなる。ボデーショップで使っている一般のスプレーガンの塗着効率は約40%程度。つまり吹き付けた塗料の半分以下しか塗膜にならない、残りの半分以上ははブースの壁に付いたり、床ピットから吸い込まれてフィルターを塗装していることになる。これが低圧高吐出量のHVLPになると60〜70%に上昇し、静電エアレス塗装機では80%を越えるものもある。では塗着効率100%の塗装機はあるのだろうか。ある。それも身近なところに。ハケやローラーがそうである(扱いが下手だと多少こぼれるが……)。
ドライスプレー
塗膜トラブルとしてのドライスプレーは、溶剤の蒸発速度が速すぎて、塗膜の表面が平らにならない間に硬化乾燥してしまい、表面がざらざらで肌も艶もまともでなくなった状態のこと。吐出量を絞りすぎたり、エア圧が高すぎると起きやすい。程度が軽ければ、表面を研磨ポリッシュして修正できるが、ひどくなるとやり直しである。なおドライコートと混同して用いられていることもある。